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これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 応用編」②

投稿者:訪問歯科119番

 

現場でのルーティンワーク

1)初回のアセスメント

初回の訪問時には、必ずアセスメント表を使用し、アセスメントをとります。
基本的には初診時で結構です。その後は身体状況に変化がなければ問題ありません。
アセスメント時に確認する情報は、以下となります。

① 身疾患の有無
② 感染症罹患の有無
③ 血圧測定
④ 服用中の薬剤
⑤ 主治医
⑥ 歩行の自立度
⑦ 意思の疎通の程度
⑧ 食事の摂取状況
⑨ 介護状況
⑩ 介護サービス
⑪ 担当ケアマネージャー
⑫ 口腔状態

アセスメントは、今後の治療方針を立て、診療上のリスクヘッジのために必要なものです。必ず行って下さい。
アセスメント表はカルテと一緒にファイリング管理し、いつでも見ることのできる状態にします。

アセスメント表の1ページ目には、利用している介護サービスやケアマネージャー、主治医等の情報を記入します。
アセスメント票の情報をチェーンマーケティングに活用します。連鎖的なマーケティングを実現するための重要な情報源となります。
〔 記載例1枚目 〕
〔 記載例2枚目 〕
(2)一部負担金の説明

初診時(在宅型検診を行ったときは検診時)に、費用の説明を行います。
一部負担金は、治療を開始する前に必ず説明をします。
内容は次のとおりです。

① 医療保険の治療1回あたりの金額
② 医療保険の1ヶ月の概算金額
③ 介護保険の認定を受けている場合は介護保険の自己負担分が同時に発生する旨の説明
④ 介護保険の自己負担分金額の説明
⑤ 医療保険と介護保険の自己負担分の回収方法

後々トラブルにならないように、相手が同意しているかを確認しながら説明を行います。
自己負担分の回収方法は、なるべくその都度頂く事をお勧めします。月単位でまとめて回収する方法もありますが、その場合金額が大きくなるため患者の負担感が大きくなる、または回収不能になる可能性が大きくなるリスクが生じます。
月単位で回収する場合には事前(月末)に請求書を発行、いつ回収するのかを伝えてください。
診療の度に頂く場合でも月単位で頂く場合でも、領収書は必ず発行してください。
自己負担分は、医療保険も介護保険も必ず徴収します。
自己負担金を頂く歯科医師と頂かない先生がいると患者や介護事業者が混乱します。また、医療費負担金を頂かないということは違法行為となります。

医療費が高額になる患者の場合、自治体等から問合せがくるケースもあります。自己負担金を頂かないという事は、当然領収書も発行できません。そのようなケースでは、医院側が万が一患者の経済状況に配慮して徴収しなかった場合でも、歯科医師と患者間の結託とあらぬ誤解をうけてしまう可能性もあります。
当然、患者にも迷惑がかかってしまいます。
〔 一部負担金 〕

料金の説明時に、生活保護や障害者助成を受けられている公費負担の有無も確認します。
また、要介護認定を受けている患者の場合、介護保険の保険証の有効期限を必ず確認してください。更新時期を忘れないよう注意が必要です。

(3)次回予約

診療が終了すると、次回訪問の予約を取ります。特別の理由がない限り、できるだけその場で確定してください。一番効率的で楽な方法です。患者の許可を得てカレンダー等に記入してもよいでしょう。

(4)カルテを書く

カルテは診療時にその場で記入するようにします。ただし、記入のための時間が取れない場合や、1日の訪問件数が多くスケジュールがタイトなときは医院に戻ってから記載します。
必ず、その日のうちに記載するようにしてください。時間が経てば経つほど作業が煩雑になり、記憶が混同するようになります。
また、すぐにカルテを作成できない場合は、診療内容などをスタッフにメモを取ってもらうなど、記載漏れがないようにします。
(5)治療内容説明書

治療内容説明書は、患者やその家族、または担当介護事業者とケアマネージャー向けに、治療状況を伝えるためのものです。
治療内容説明書の作成は、次の内容を目的として行います。

① 治療状況情報の共有
② 訪問歯科診療に対する姿勢のアピール
③ 他訪問歯科医院との差別化
④ 介護事業者との連携
⑤ 患者掘り起こしのためのマーケティングツール

治療内容説明書は、当日の治療内容をわかりやすく記載します。
基本的には患者とその家族にお渡しします。
しかし、一人暮らしで意思の疎通が不可能である患者や、担当ケアマネージャーが全てのことを把握している場合も多くあります。

診療に伺った当日、遅くとも翌日までには作成し、患者宅で保存していただきます。
担当ケアマネージャーへ連絡する場合は、FAXもしくは直接手渡します。診療に伺ってから時間が経過すると、患者や家族から既に情報が伝わってしまっていることがあります。そうした場合、治療内容説明書を作成する効果が半減します。必ず当日中、もしくは翌日までに作成するように心がけてください。

連絡する内容としては次のものがあげられます。

① 訪問歯科診療を行った日時
② 誰に対して訪問歯科診療を行ったのか
③ 簡単な口腔状態と今後の治療計画
④ 治療内容(アセスメントをとった、ブリッジの修理を行ったなど)
⑤ 今後の予定
⑥ 患者が同意した治療方針(入れ歯の作成、現在の入れ歯の調整など)
〔 記載例 〕

歯科訪問診療の対象となる高齢者の多くは、口腔内に問題を抱えています。治療を行い、症状を改善したとしても、終了時の口腔状態を維持することができないケースがほとんどです。
高齢になればなるほどブラッシングに関する知識や意識が乏しく、また体力の衰えや身体の障害のために思うように口腔内のケアを実践できなくなります。
それらを改善するためには第三者の助力が必要不可欠です。そして、それを行うのは、「歯科医師」や「歯科衛生士」以外には考えられません。
また、患者自身ではできないという状況の方もいます。そのような方々の口腔内のケアを本人に代わって行うのも、「歯科医師」や「歯科衛生士」の役割になります。
言い換えれば、高齢者の口腔ケアは「歯科医師」「歯科衛生士」の義務とも言えます。治療が終了したからといってその段階で訪問を終えるのではなく、患者が自分自身で口腔内のケアができるようになるまで指導を行うことが求められます。

(1)口腔ケアとは

口腔ケアを行う意義には、次のことがあります。
① う蝕や歯周病などの口腔疾患の予防
② カンジダ症や誤嚥性肺炎の予防
③ 咀嚼、摂食・嚥下、発音、審美性等の機能維持
④ 唾液の分泌の促進
⑤ 口臭の除去・爽快感の保持
⑥ 正常な味覚の維持(おいしく食べる楽しみ、喜び)
⑦ リハビリテーション

(2) 口腔ケアへ移行する

口腔ケアは必要かつ重要なことですが、患者本人や家族の同意を得る事ができなければ実施できません。
口腔ケアに移行するためには、患者や家族の理解が必要です。治療が終了した段階で、突然、次回からはケアですと伝えても、理解を得ることは困難です。
口腔ケアに移行するための意識付けは、治療の開始から行うことが必要です。
口腔ケアに移行するために、次のことに注意して患者、家族と向き合うことが重要です。

① 初診時に、口腔内が現在のような状況になったのは、ケアが不十分だったことが原因であることを説明し、口腔ケアの重要性を説く
② 治療方針の説明時に、治療の終了後は口腔ケアに移行することを必要性とともに説明する
③ 治療途中でも、口腔ケアの重要性を説く
治療終了時に口腔ケアへと移行ができなかった場合でも、「確認のために○○ヶ月後に一度様子を診にきます」等と説明し、打ち切ることがないようにします。

歯科訪問診療時では、対象となる患者が寝たきりもしはそれに準ずる身体状態の方が多くいらっしゃいます。
実際の訪問では、ベッドから車椅子への介助、ベッドから起こす等の介助が必要となります。
基本的なことや方法は確認してください。

(1)介助のポイント

① 無理な姿勢は腰痛を引き起こす。膝の屈伸やてこの原理を利用する
② できるだけ要介護者に密着して介助する
③ 要介護者に声かけをして一緒に動く
④ 必要以上に介助しない。本人ができることは本人の力に任せる
⑤ 動作はゆっくりと行い、患者を驚かせないようにする
⑥ 介助をするときはできるだけ軽装で、動きやすい格好で
⑦ アクセサリー類は患者を傷つける危険性があるため外す

(2)ベッドからの起き上がり

① 介助者は患者の健側(状態の良い側)に立ち、自分のほうへ寝返りをうたせる
② 片手で腰を支え、もう一方の手で両足の膝から下をベッドから下ろす
③ 片手を下側の肩の下に差し込み、肩甲骨をしっかりと支え、もう一方の手で上側の肩を支えながら、体を起こす
(3)歩行
① 基本の介助
向かい合い、ひじを握り合って支えながら、一歩一歩しっかり踏みしめ歩く

②杖歩行の場合の介助
介助者の手を後方から支え、患者の杖を持っていないほうのわきの下に手を差し込んで支える

腰ベルトがある場合には片方の手で杖を持っていない側に立ち腰ベルトを持つ。もう片方の手は肩の前面に置くこと
③階段昇降の介助
介助者は要介護者の杖を持っていない側に立ち、介助する。
腰ベルトをしている場合は、腰ベルトを持ち支える
(4)車椅子を知る

①車椅子のタイプ
■標準型
車輪が大きい自走型は介助もしやすい

■コンパクトタイプ
軽くて持ち運びやすいが、車輪が小さいため
段差などでは介助者への負担が大きい

■電動式
既成の車椅子にユニットを装着して電動化し、
介助と併用できるタイプもある
■リクライニングタイプ
座る姿勢を保ちにくい人向き。普通の形で
座面の角度がつくタイプもある
② 車椅子の名称
③車いすの押し方
■車椅子の真後ろに立つ
■両手でハンドグリップを深く、しっかりと握る
■前後左右に注意してゆっくりと押す

④上り坂は、介助者は押し戻されないように上半身を前傾姿勢にし、一歩一歩しっかりと押し上げる
⑤緩やかな下り坂は前向きで車椅子を引くようにして下りる。急な下り坂は、介助者は後ろ向きで軽くブレーキをかけ、車椅子を支えながら一歩一歩ゆっくりと下りる

⑥段差、階段の上がり方
車椅子を段差に近づけ、ステッピングバーを踏み前輪を浮かせ、段の上に上げる。後輪が段差に軽く接触するまで静かに前進する。ハンドルを持ち上げ、後輪を浮かせるようにし、段差に沿って前に押し上げる

⑦降り方
車椅子を後ろ向きにし、後輪を少し浮かす感じで、段に沿ってゆっくりと降ろす。ゆっくり後ろに下がり、前輪が段差に近づいたら前輪を浮かせ、フットレストとつま先が段差に当たらないところまで後ろに引く。静かに前輪を降ろす
(5)ベッドから車椅子へ

① 車椅子はベッドに対して30~45度の角度に置く
② 車椅子のブレーキがかかっていることを確認する
③ 患者をベッドの端に腰かけさせ、健側の手を介助者に回してもらう
④ 介助者は患者の腰に手を回し、足を開き、腰を落とす
⑤ 介助者は患者の腰を引き寄せて立ち上がり、向きを変える
⑥ 向きを変えながら、車椅子の座面を確かめお尻を合わせる
⑦ 二人で一緒にしゃがむように腰をかけさせる
⑧ 座ったら、深く腰かけるように位置を直す

 

高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、口腔ケア、口腔リハビリのご相談は訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182
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