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これだけは知っておきたい!!歯科医療従事者向け「訪問歯科診療マニュアル 基礎編」④

投稿者:訪問歯科119番

対象:訪問歯科部門をこれから立ち上げようとしている歯科医療従事者・

訪問歯科部門をさらに拡大したい歯科医療従事者

 

在宅歯科医療支援機構が約15年間で培った経験を基に、

訪問歯科診療の現場運営・集客方法・保険請求など、あらゆる状況・状態に対応できる

今スグ役立つ内容です。基礎編・応用編・保険請求編の3部構成です。

訪問診療部門の立ち上げから拡大まで、具体的手法を幅広く網羅した画期的なノウハウをわかりやすく

お伝えします。このブログの内容をぜひ参考にしていただき、患者様に対する訪問歯科診療サービスの

質向上につなげてください。

 

第9節 薬剤の処方について

普段の診療でも言えることですが、医療で重要とされることは「問診票を正確に書く」ということです。「今までにどのような病気に罹ったことがありますか」「現在飲んでいる薬はありますか」といった内容の質問を記載してもらいます。

全身疾患や投与薬剤の中には歯科治療と関連のあるものが意外に多いのです。

ある種の病気では血栓を予防するために抗凝固薬が処方される場合があります。

抗凝固薬は血液が固まらないようにする薬のため、歯科治療で抜歯したあと止血しなくなってしまう可能性があります。抗凝固薬を飲んでいる患者には歯科医師が内科の先生と相談し、抗凝固薬をそのまま続けるか、減量するか、あるいは一時的に中止するかを決定してください。

その場合は、診療情報提供書のやりとりが必須となります。

また、アスピリン喘息という病気があり、アスピリン喘息の患者は抜歯後などに処方される痛み止めの薬で喘息発作が起こることがあります。歯科医院で処方される鎮痛薬の多くはアスピリン喘息を起こしやすいといわれています。

歯科医師がアスピリン喘息であること知らず、鎮痛薬を渡してしまう可能があります。アスピリン喘息の患者は、必ず把握しておく必要があります。

初診時は健康だったが、歯科治療を続けているうちに、内科的な病気になり、かかりつけの病院で薬を処方されたというときも歯科医師に報告していただいて下さい。歯科治療と関係がある薬かどうかは、医師と歯科医師が判断します。患者には薬の名前を報告していただければよいのです。

(1)薬剤による口腔内への影響

薬剤には副作用がありますが、口腔内に及ぼす影響としては「歯肉増殖」と「口渇」があります。

副作用は必ず出現するものでもなく個人差もありますが、治療前に把握しておくことが必要となります。

 

①歯肉増殖

歯肉が腫れあがり、悪化すると歯の大部分が隠れてしまうことになります。原因は不明ですが、プラークが付着していると悪化し、除去すれば抑制されることが判明しています。

②ドライマウス

唾液量の減少は薬剤によっても個人によっても異なります。高齢になると唾液の量が減少するため、どこまでが薬剤の副作用なのかは明確にすることはできません。

(2)投与されている薬剤の把握

訪問歯科診療はもちろんですが、最近では高齢化社会を反映し、外来でも高齢の患者が増えています。歯科受診される患者の年齢も高くなっています。誰しも年を重ねるにつれて動脈硬化が進み、血圧症や糖尿病といった、いわゆる生活習慣病にも罹りやすくなります。何らかの基礎疾患を持っている、あるいは内科の先生から薬をもらっているという患者は、必ず、そのことを歯科医師やスタッフが把握してください。安全に歯科治療を行うためには、患者の情報は重要です。

第10節 感染症予防

医療従事者には感染事故の危険が常につきまといます。訪問歯科診療も例外ではありません。

歯科診療で十分に注意を払わなければならない感染症には次のようなものがあります。

 

(1)歯科診療で注意を払わなければならない主な感染症

 

①肝炎

肝炎は、病態により主に急性肝炎、慢性肝炎、に分けられます。また、成因によってウィルス性(A型、B型、C型、E型その他)、アルコール性、薬物性、自己免疫性、その他に分類されます。日本人の場合、80%がウィルスによるもので、次いで薬剤やアルコールが原因となっています。

B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルスは、主に血液の中に出て、血液を介して感染します(経皮感染・血液媒介型感染)。血液に直接触れないようにする予防が必要です。また、分泌物や排泄物にも血液が混じっている恐れがありますので、予防的に血液と同じ扱いをすることが必要です。

②MRSA

MRSAは、Methicillin-Resistannt Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の頭文字をとったものです。

「菌の検出」は、必ずしも「その菌による感染症」とは言えません。MRSAは非常にありふれた菌で、鼻の中にMRSAを付着したまま家庭や施設で過ごされる方もいます。MRSAを付着しているけれども、病気は起こしていない状態を『保菌』していると言います。しかし、『保菌』しているからといっても、家庭や施設で過ごせるような人であれば、重症化して、実害を及ぼすようなことはありません。

MRSAの保菌者については、抗生物質投与といった特別な処置、除菌を行う必要はありません。保菌者の隔離、ガウンテクニック、鼻の中の除菌も不要です。

 

③HIV

HIVウィルスは血液や体液を介して感染します。しかし

他の感染症を引き起こすウィルスと比べて感染力が低く日常的な接触では感染しません。

これらの感染症に対する、基本的な注意点、予防策としては次のようなものを注意してください。

■感染物に素手で触れた場合は、必ず流水で手洗いをする

■診療時には、必ずグローブを着用する

■タービン、エンジンで飛散する可能性のあるものはフェイスガードで目、鼻、口などの粘膜を保護する

 

(2)消毒と殺菌(スタンダードプリコーション)

 

医療従事者は、感染症の有無に関わらず、消毒と殺菌は行わなければなりません。患者への感染を予防するため、また、自身への感染も事前に防がなければならないのです。

ケアを受ける全ての患者に適用する予防策であり、血液・体液・汗を除く分泌物・排泄物・損傷皮膚・粘膜に適用される予防策です。全ての患者に対して、手洗い・手袋・マスク・ガウン・器具・リネンなどの予防策を実践することが求められます。

※強酸性水について

強酸性水は、報告例で、一般細菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、淋菌、インフルエンザ菌、サルモネラ菌、チフス菌、ボツリヌス菌)は30秒以内で死滅。結核菌は1~2分で効果があり、ウィルス(ヘルペス、エンテロウィルス)やカンジタを含む大部分の真菌に対しては30秒以内で効果があると出ています。

しかし、ウィルスでも一部のもの(サイトメガロ、エイズ、ポリオ)に対しては3分前後、カビ、糸状菌では数分を要することがあります。

強酸性水は、一般の消毒薬とは異なり物質に浸透せず、空気に接すると直ちに成分が揮発して、その効果を失います。そのため、塗布するのではなく、流して使用するなどの工夫が必要になります。

訪問歯科診療に向いている器具や手指洗浄用剤としては次のようなものもあります。

■タイフレッシュ・エース

歯科用具洗浄液。血液、バクテリアなどに優れた効果があります。原液から100倍希釈までいろいろな用途で使用可能です。

■タイフレッシュ・ユニ

衣類用洗浄液。院内で使用したタオルや白衣などの汚れ、細菌バクテリアをしっかりと落とします。

■タイサリート

手指消毒剤

※上記の薬剤は一般歯科でも使用され、殺菌効果が優れており入手しやすい商品です。

(3)消毒剤の副作用

消毒剤の副作用について、手術消毒時の手あれや過敏症等が知られていますが、その他にも強い毒性を持つものがあります。

消毒剤の副作用は適用を受ける患者のみならず、その取扱い者にも生じるため、使用法については十分な注意を必要とします。

■グルタールアルデヒド

皮膚炎、結膜炎、鼻刺激症状、アレルギー等。

グルの毒性は強く、その使用は器具のみに限る。人体への付着のみならず、その蒸気の吸入でも生じ、目や呼吸器系の粘膜を刺激する

■次亜塩素酸ナトリウム

塩素ガスの発生による喉頭や気管支の痛み、咳等。

大量の塩素ガスの吸入は、次亜塩素酸ナトリウムを換気の悪い場所で広範囲の清拭に用いた場合に生じやすい

■イソジン、ヨードチンキ

甲状腺機能異常、腎不全等。

イソジンやヨードチンキの要素は、口腔粘膜、熱傷部位及び新生児の正常皮膚などからよく吸収される性質がある。これらの部位に頻繁に使用すると、血中ヨウ素濃度が上昇し副作用を起こす可能性もある

■消毒用アルコール

大量吸入による中枢抑制作用。

ヒビテンアルコール引火による火傷に注意

 

第11節 チームワークなくして成功はない

チームワークとは、スムーズに診療が行えるよう、各々のワークをこなしながら医院全体の連携を保つために、重要なことです。

うまくコミュニケーションのとれている院内では、会話を持たなくとも、伝わる連携が自然に行われているものです。

患者が居心地良く感じる、コミュニケーションのとれた歯科医師とスタッフの関係により、医院全体が「チーム」と感じた瞬間、患者にとっては安心感が広がるのです。

意識的に「チームワークを良くみせよう」とすることで、行動を見直し、チームワークのあり方を再認識することが重要です。

 

やる気を起こさせるには、不平や不満が出ないような環境が大切です。特にスタッフは、与えられた仕事ができたときに達成感を感じ、院長に褒められ、患者に喜ばれたときに喜びを体感すると考えられます。

例えば、スタッフのモチベーションを維持させるため、業務別に人事考課をし、集計をして等級や役職を与え、さらに給与を昇給するという手法や、毎月の基本給にインセンティブ制度を導入するなどの考えが基本になるものと考えられます。

衣食住や賃金などの欲求が満たされてくると、より高い欲求が呼び起こされて、仕事のやりがいや生きがいなどに関心が向いていきます。

歯科医院全体が常に活性化している医療チームとならなければなりません。

 

(1)基本事項

 

歯科医院経営者は、スタッフの退職と常に直面しています。

勤務していた担当者が退職するということは、その担当者が受け持っていた患者も去ってしまうという危機感を常に持っていなければなりません。

そのさい、重要となることは次の2点です。

 

 

①引継ぎを強化する

 

引き継ぎの内容は、受付事務、患者応対、電話応対。

診療補助業務においては、器具器材の取り扱い、管理、セメント練和などの手技的なもの、そして院長との連携操作までかなり細部にわたります。これらの業務は各スタッフで分担されていることが多く、その担当者にしかわからないというのが現状であるため、後になって「聞き忘れた」や「引継ぎしていない」などのミスは起こってきます。

そこで「引き継ぎリスト」を作成、その項目の中で退職者が行っている内容に対し、マニュアルの作成、更新を行ってもらいます。

診療内容に関しては、院長との連携作業であり、内容に関しては院長が知っているため問題は最小限で済みますが、レントゲンの管理や院内清掃、患者情報関連、管理業務については、院長が理解し得てない部分が多いので注意が必要です。

 

  • 新人教育とスタッフ教育

 

新人が入ってもすぐに同じ程度の仕事レベルになるよう、

スタッフマニュアルを作成することです。

職場のルールやマナー、教育訓練計画の作成も必要です。短期間に一定レベルの知識・技術が習得できる環境を作りましょう。仕事への意欲を新たにするように積極的に各種研修会やセミナーなどにスタッフを参加させるというのも良案です。

スタッフの退職時による様々な心の揺れ、急に仕事量が増えストレスを抱えているスタッフ、連鎖反応で退職したくなるスタッフもいます。

また、新人は新しい職場における緊張感で悩み負けそうになります。院長はそんなスタッフの悩みを一手に引き受け、人事面での悩みも抱えながら大きなストレスを感じます。このような時こそ重要になってくるのは「コミュニケーション」です。

院長自らが、医院において心がけている事、守って欲しい事、診療に対する意志などをきちんと伝えるべきです。

院長から直接話された内容は、スタッフの心に残っているのです。

 

 

(2)勤務医や歯科衛生士の雇用

 

代診の歯科医師は、訪問歯科診療をはじめた当初は必ずしも必要はありません。

はじめのうちは、昼休みの時間帯や休診日を訪問診療に充てることで、対応できます。

代診を雇用するタイミングは、1日あたりの訪問数、訪問診療の患者数、1ヶ月のレセプト点数などを目安に判断してください。

代診の先生を雇用する場合は、訪問診療を行う意思があるかどうかの確認と、コミュニケーション能力を重視します。

訪問診療を望まない先生に訪問診療を行わせてもうまくいきません。

歯科診療は、外来も訪問診療も口コミで広がる場合が多く、

やる気のない先生に訪問診療をしてもらっても、悪評が広がっていく可能性もあります。最悪の場合、訪問診療の患者数が伸びないだけではなく、外来にまで影響が及ぶ可能性が高いのです。

また、院内と比べ、患者とのコミュニケーションが難しく、コミュニケーションスキルが求められるため、コミュニケーションがうまく取れないような人は訪問診療に向いていません。

 

訪問診療に歯科衛生士は必要不可欠です。

訪問歯科診療の場合、診療に占める口腔ケアの割合が高くなります。

衛生士の有無によりレセプト上で請求できる点数も大きく異なります。

そのため、歯科衛生士は訪問診療を開始する前に募集をかけておくことが望ましいと言えます。

 

(3)スタッフの定着率を高める

 

スタッフ同士の話の中で、「いいなぁ~、うちなんか・・・」と、必ずと言っていいほど聞こえてきます。本当に思っているのか、心の中では「うちの医院の方が断然いいわよ」と思っているかはわかりませんが、他院と比べるとこのような言葉が出てしまうものです。

ならば、どのような医院が100点満点なのか?と言われると実際は万人受けする医院はないのです。

居心地のよい活気のある医院にするには、院長もスタッフもお互いがお互いを信じ合い認め合うことです。

効果が出やすいもののひとつとして待遇の改善があげられます。待遇の改善はスタッフの定着率を高めるポイントとなります。

 

①給与水準を若干高めにする

②3~4年目のスタッフへ対する待遇の考慮

■金銭面、地位などのほかにも長期有給休暇制度など仕事に対する気持ちをリフレッシュさせるような気遣いをしてあげることです。仕事に対する姿勢も一層良いものとなります。やれば報われるシステムで医院を運営することも効果的です

③スタッフ同士の人間関係を円満に保つ

■ベテランスタッフによるいじめなどがないように注意を払ってください

④院長の経営方針に一貫性をもたせる

■採用の面接時に言ったことと矛盾がないようにしてください

⑤院長の好き嫌いを抑える

■特に、態度に出ないように心がけてください

⑥スタッフの意見を聞く体制をとる

■定期的にミーティングをもって、普段からスタッフ間のコミュニケーションをはかる場を設けます

⑦休暇を取りやすくする

■非常勤のスタッフ等を採用し、人員に余裕をもたせるなど工夫が必要です

⑧スタッフのプライバシーを尊重する

⑨帰宅時間が遅くならないようにする

■訪問診療の場合も予約制ですが、高齢者医療であり、交通事情にもより帰宅時間等に支障が出やすくなりがちです。

時間管理を心がけてください

高齢者、要介護者、障がい者の方への在宅歯科 診療、訪問歯科診療(歯科訪問診療)、口腔ケア、口腔リハビリのご相談は訪問歯科119番/在宅歯科医療支援機構 0120-763-182

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